岐阜県養老郡にある養老天命反転地に行ってきました。
なんやねん、それ?!というあなた、それは私も全く同じだ、うん、安心していい。
字面だけ追うなら完全に宗教施設じゃねーかと。
しかもかなり怪しい部類の。
ところがこれ、どうやら体感できるアートな公園施設らしいんですね。
wikiによると、作品の中を回遊し体験することで作品を鑑賞するモダンアート。荒川修作とマドリン・ギンズの構想による施設である、とのこと。
さて、私はアートとは縁遠いオッサンですんで、荒川氏もマドリンはんも全く知らないし、その功績や評価を聞かされたところで理解できるとは思えないんですが、直感的にね、なんだかこれ、ちょっと面白そうだな、と。
某テレビ番組でいうところの「パラダイス臭」がしてならないのは私が関西人だからでしょうか。
調べれば調べるほど、こりゃ行くしかない、という気持ちになってきたんですよね。
パンフレットによると、
荒川氏とマドリン氏は世界の絶望的な状況を希望ある未来へと転換させようとしており、そのためには「死」を前提とした古い常識を覆すことが必要だと言っている。
「死」へ至る「天命」を反転することを使命として彼らは30年研究してきた。
彼らが注目したのは「身体」と身体に作用する「環境=建築」。
身体感覚の変革により、意識の変革が可能だと彼らは考えた。
養老天命反転地は水平垂直を極力排し、平衡感覚や遠近感に揺さぶりをかける仕掛けが全体に施されている。
ここには私達をヨチヨチ歩きの子供に戻す精緻な計算があるのだ。(筆者要約)
と、あります。
えー、正直申し上げましてですね、言うてることの意味がさっぱりわからん。
これを親しい友人がある日突然弁舌さわやかに語りだしたら、間違いなく私は「寝言いうてんのか!しっかりせえ!」と頭をはたく。
ああっ、すいません、ほんと芸術がわからんやつなんです、私は。
さらには使用法として、
(ここ、めんどくさかったら読まなくてもいいです)
<極限で似るものの家>
・色んな所から出たり入ったりして、バランス失いそうになったら自分の名か他人の名を叫べ
・自分の家との類似を探し、ないようだったら、自分の双子と思え
・思わぬことが起こったら立ち止まってより良い姿勢をとれ
・一組の家具は他の家具との比較の対象として使え
・遠く離れてる家同士に相似を探せ、異なる相似も探せ
<楕円形のフィールド>
・バランスを失うことを恐れるより、感覚を作り直すつもりで楽しめ
・日本と呼ばれる列島の、見えたり見えなかったりするつながりで、自分がどこに居るのか常に問え
・空をすり鉢状の地面に引き下ろせ
・フィールドを歩く時に取らなければならない極端な極端な姿勢を、近くの形と遠くの形両方に関連付けること
・不意にバランスを失った時、世界をもう一度組み立てるのに必要な降り立つ場所、種類、位置を確かめろ
「白昼の混乱地帯」の中では常に人であるより肉体であるよう努めろ
「宿命の家」や「降り立つ場の群れ」では異星人のようにさまよえ
「切り閉じの間」では夢遊病者のように腕を前に突き出しゆっくり歩け(筆者抜粋、要約、ほぼ原文ママ)
と、あります。
すまん、お手上げだ。
わしの手には負えん。
もうね、とりあえず実際に入園してみるしかないかと。
いきなり迷った。
なんなんだ養老ランドって。
遊園地っぽいが人が全くおらんぞ。
案内図を発見。
予想外に敷地が広大。
どうやらこれ、養老公園内の一施設らしい。
散々歩き回ってようやく施設への入口を発見。
受付はアートじゃないのね。
はい、遠くになんか見えてますよ。
離れて外観を俯瞰する限りでは、配色の趣味が悪い現場のプレハブである。
おそるおそる入室してみると・・。
・・・・・・・・・・・・。
えーと、子供向けの迷路的な。
なんとなくバブリーな匂いを嗅ぎ取ってしまうのは世代のせいか。
でも90年代初頭に、こんな感じの驚かせてナンボなクラブへ行ったことがあるような気がする。
一応、綿密なプランのもと作られてるようです。
小細工してるのか手を抜いてるのかよくわからん出口。
えー写真に写り込んだ知らない人の顔に逐一修正いれてるんでわかりにくいと思うんですが、見知らぬカップルにやたら見られてます、わし。
というのもですね・・。
実は今回、入園の段階ですでにこの格好だったんですよね。
いやね、ここぐらいぶっ飛んだ施設ならパツキン長髪も周りに溶け込めるのでは、と思ったんですけど、まったくもって目算違いでございました。
めっちゃ見られてるし!
行く先々で怪訝な顔されてるし!
いやいや昔はちょいと街を歩けばパツキン長髪の一人や二人、普通に見かけたんだよ、居たんだよマジで!
知らないだろうけどさ、あなた達平成生まれのヤングエイジはさ!
今やこのタイプは絶滅危惧種ってか!
やばい、ちょー恥ずかしい。
でも今更衆人環視の元、普通のおじさんには戻れんわけだ。
戻ったほうがむしろ騒ぎになりそうな気がする。
十中八九知らないところで晒されちゃいそうな気がする。
ということで開き直って、撮ったのがこの1枚。
ああっ、周りの目線が痛い、なにやってるのあの人?1人でポーズつけてるしって、クスクス笑いが聞こえてくるようだよ。
なんだこの生殺し感。
ちょっとウケたいだけのはずが、いつのまにやらこのように自ら社会不適合者を演じる羽目に。
ぐるりと裏に回り込んでみたら「養老天命反転地オフィス」との標識が。
このちびっ子迷路ハウスみたいなのがオフィスやったんかいっ!
落ち着いて会議もできんわ!
オフィスを出ると遠方に、どう見ても建築基準法を無視した建物が。
建設途中で重機が傾いたんか?と。
なんとなく舞茸っぽいですな。
舞茸のかさの裏側に地図を書いて、いったい誰が「ああ、これで迷わずにすんだ!」と胸をなでおろすのか、私には見当もつかんが。
パンフレットによるとこれが「極限で似るものの家」らしい。
とりあえず入ってみる。
ベッドが壁にめり込んどるがな。
どこで寝たらええねん。
風呂までめり込んで、まあ。
さては半身浴を強制する仕掛けか。
恐ろしく使い勝手の悪そうな水回りである。
嫁いびりと糾弾されても姑は否定できんぞ、この有様では。
トイレはなぜかめり込んでないが、カメラを構えた先に女の人がいてドキッとした。
いやね、女子トイレと間違って侵入してしまったような錯覚に一瞬とらわれたんですよね。
こういうシチュエーションを想定して配置されたギミックなんだとしたら、大したものだ、と思いますが、うん、多分気のせいですね。
えーと、なんだっけ、思わぬことが起こったら何をしたら良かったんだっけ?
いちいち覚えてれんって!あのマニュアル!
元栓どこやねん。
えーと、冷蔵庫がめり込んでるのはむしろ収納上手と考えるべき手際かと。
なんか知らんがこの空間だけはちょっと心惹かれた。
ああっ、ついにアートを解する瞬間が私にも訪れたのかあっ。
「極限で似るものの家」を出て「精緻の棟」へと進む。
死を賭して向かわねばならんほど「精緻の棟」は危険なのか、と。
知らんがな。
わしが教えて欲しいわ。
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