36日目
間食がやめられなくて、体重が3キロ増え、主治医に叱られる。
「おやつ食うなとは言わないけどね、食い過ぎ。治らないよ、こんな調子だと」
殊勝に頭を垂れながらも、主治医が帰った途端に冷蔵庫を開けて買っておいたバナナを3本一気食い。
バナナの皮は袋に包んで1階まで捨てに行く。
看護師が告げ口するから。
俺、ちょっと精神的におかしくなってるな、と思いながらも、今日も食料確保に売店へ。
37日目~50日目
ここに居たくない。
ここに居たくない。
ここに居たくない。
ここに居たくない。
ここに居たくない。
ここに居たくない。
出してくれ。
出して。出して。出して。
でも医師には何も言わない。
「一進一退ですか、仕方ないですね・・・」
51日目~60日目
処方してもらった眠剤をのんで無理矢理7時間寝る。
朝食。
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昼食。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
夕食。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
処方してもらった眠剤を飲んで無理矢理7時間寝る。
61日目
気を許すと、いつのまにか「あーーーーーーー」と低い声で唸ってる。
隣のベットで、ガサッと身動きする音がする。
慌てて口を抑える。
そしてまた「あーーーーーーーーーー」
62日目
「完全には治ってないけど、この感じなら日常生活送れると思います。来週の火曜日に退院しましょうか。後は通院で」
福音の鐘が鳴った気がした。
居ても立ってもいられない。
まだ残り3日あったけど、せっせと荷物をリュックにまとめ始める。
昼から無断で外出して、近くの銀行へ。
高額医療制度が適応されるからなあ、まあ、20万超えることはないだろう。
相変わらずちょっと歩くだけですぐ息切れするが、医師がいいって言ってるんだから退院しますよ、俺は、今更やっぱり無理とか聞けないから。
近くのコンビニも、毎日欠かさず通っていた売店もスルー。
もう食ってやらないから。
いやだって、うまくないし。
病院の飯も致命的にうまくないけど、決して君たちが優れてたわけじゃないからね、誤解すんなよ。
さあ、血を抜くなり、骨髄採取するなり、好きにやれ。
だってもうおさらばだし、わははははは。
つい鼻歌も口をつく。
♫ Somewhere over the rainbow~Way up high~
あかん、この歌やと虹の橋を渡ってしまう。
自分の中にオズの魔法使いが潜んでたことに驚いた。
62日目~65日目
なんかずっとテンションが高かったのは覚えてる。
あーもう、まーだー???と時々つぶやいてた気がする。
66日目
事務員が請求書を持って病室にやってくる。
「6番窓口で支払いしてください。退院おめでとうございます、お疲れ様でした。お大事に」
ちなみにねぎらいの言葉をかけてくれたのはこの人だけ。
看護師はいつもの業務に追われていて、私を見向きもしないし、主治医もやってこない。
うんうん、いいんだ、いいんだよ、二度とこねえから、ここには。
よっこらせ、とリュックを背負って病院の外にでると世界は一変していた。
・・・・めっちゃ積もっとるがな。
いやこれ、電車動いとるんか。
まあ、いいか。
不細工にステップを踏みながら駅へと向かう私。
滑ってころんで再入院ってか。
それまた一興。
嘘だ、強がりだ。
大きくたわんだ梢から雪花がはらりと舞った。