入院とか、自分に関係ないと思ってた 8

32日目~35日目はこちら

36日目

間食がやめられなくて、体重が3キロ増え、主治医に叱られる。

「おやつ食うなとは言わないけどね、食い過ぎ。治らないよ、こんな調子だと」

殊勝に頭を垂れながらも、主治医が帰った途端に冷蔵庫を開けて買っておいたバナナを3本一気食い。

バナナの皮は袋に包んで1階まで捨てに行く。

看護師が告げ口するから。

俺、ちょっと精神的におかしくなってるな、と思いながらも、今日も食料確保に売店へ。

37日目~50日目

ここに居たくない。

ここに居たくない。

ここに居たくない。

ここに居たくない。

ここに居たくない。

ここに居たくない。

出してくれ。

出して。出して。出して。

でも医師には何も言わない。

「一進一退ですか、仕方ないですね・・・」

51日目~60日目

処方してもらった眠剤をのんで無理矢理7時間寝る。

朝食。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

昼食。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

夕食。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

処方してもらった眠剤を飲んで無理矢理7時間寝る。

61日目

気を許すと、いつのまにか「あーーーーーーー」と低い声で唸ってる。

隣のベットで、ガサッと身動きする音がする。

慌てて口を抑える。

そしてまた「あーーーーーーーーーー」

62日目

「完全には治ってないけど、この感じなら日常生活送れると思います。来週の火曜日に退院しましょうか。後は通院で」

福音の鐘が鳴った気がした。

居ても立ってもいられない。

まだ残り3日あったけど、せっせと荷物をリュックにまとめ始める。

昼から無断で外出して、近くの銀行へ。

高額医療制度が適応されるからなあ、まあ、20万超えることはないだろう。

相変わらずちょっと歩くだけですぐ息切れするが、医師がいいって言ってるんだから退院しますよ、俺は、今更やっぱり無理とか聞けないから。

近くのコンビニも、毎日欠かさず通っていた売店もスルー。

もう食ってやらないから。

いやだって、うまくないし。

病院の飯も致命的にうまくないけど、決して君たちが優れてたわけじゃないからね、誤解すんなよ。

さあ、血を抜くなり、骨髄採取するなり、好きにやれ。

だってもうおさらばだし、わははははは。

つい鼻歌も口をつく。

♫ Somewhere over the rainbow~Way up high~

あかん、この歌やと虹の橋を渡ってしまう。

自分の中にオズの魔法使いが潜んでたことに驚いた。

62日目~65日目

なんかずっとテンションが高かったのは覚えてる。

あーもう、まーだー???と時々つぶやいてた気がする。

66日目

事務員が請求書を持って病室にやってくる。

「6番窓口で支払いしてください。退院おめでとうございます、お疲れ様でした。お大事に」

ちなみにねぎらいの言葉をかけてくれたのはこの人だけ。

看護師はいつもの業務に追われていて、私を見向きもしないし、主治医もやってこない。

うんうん、いいんだ、いいんだよ、二度とこねえから、ここには。

よっこらせ、とリュックを背負って病院の外にでると世界は一変していた。

・・・・めっちゃ積もっとるがな。

いやこれ、電車動いとるんか。

まあ、いいか。

不細工にステップを踏みながら駅へと向かう私。

滑ってころんで再入院ってか。

それまた一興。

嘘だ、強がりだ。

大きくたわんだ梢から雪花がはらりと舞った。

もう少し続きます

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