車でぐるりと志津川方面に向かう。
途中でこのようなつり橋が。
天ヶ瀬橋、とあります。
宇治と言えば塔の島へ渡る土橋が有名ですが、この橋はがっちりと木板が。
全くゆれません。
十津川村のつり橋の恐るべきスリリングさに比べたら赤子の手をひねるようなもの。
いや、ひねられてるのは私なわけですけれど。
ちなみに私が目指しているのは天ヶ瀬森林公園入り口。
天ヶ瀬ダムの南側からぐるりとまわり、志津川区民運動場を横目に山道を登攀すると、ちょうど天ヶ瀬ダム北側から70メートルほど階段を登った地点に着くんですね。
もちろん天ヶ瀬ダムから歩いていくことも可能ですが、天ヶ瀬ダムは5時に閉まっちゃうのでここまで来た方が無難。
遊んで帰ってきたら出られなくなった、なんてこともありえます。
無料駐車場も真横にあり。
ただし、ここに到着するまでの道は結構な悪路です。
ご注意を。
着きました。
何人か人が居て驚いた。
何故かこの場所、Googlemapに一切の表記がありません(2015年当時)。
ちゃんとこのように案内板もあるのになあ。
そして次の瞬間、予想だにしなかった出来事に遭遇して、私は公園入り口で凝固する。
はああああああああああああああ?!
へ、へいさっ?!
下調べをせずに行きあたりばったりで行動するからこういうことになるのである。
どうする私!
つーか、今更帰れねえよ!
しばし、赤錆びたチェーンの前で逡巡する私。
そしたらですよ、先程看板の前にいたお兄さんがチェーンをひょい、と超えて中にスタスタと。
えっ?
さらに地元の人と思しき、別の老齢の男性もあとに続くがごとくひょい、と一跨ぎ。
よく見ると公園内の建物に数人の老若男女が群がり、お茶してたりもする。
・・・・あ、いいんだ。
有名無実化してるのか、それとも「一応ダメって書いたからね、あとは知らないからね」と行政が放置してるのか、事情はわかりませんが、みんな気にしてないみたいなので、私も気にせず侵入することにする。
特に災害の痕跡は見当たらず。
どうも幾通りかのルートがあるようですが、わかんないのでとりあえず左へ、左へと行くことにする。
目指すは頂上。
絶景との評判。
うーむ、ちょっと荒れてきたか。
つーかこれ、どこが公園なのか。
普通に山登ってるだけなんだが。
もうね、延々こんな感じなんです。
やっと階段が終わったかと思えばまた階段、そして階段、ただただ階段。
滝のように流れる汗。
破裂せんばかりに空気をむさぼる肺。
すでに笑い始めてる両膝。
災害とか関係なしにそもそもが無理だったのでは・・・と、逆流しそうな胃袋に思いを馳せる。
牛歩の歩みで40分ぐらい登攀した頃でしょうか。
粗末な丸太のベンチが。
振り返ればそこには下界の風景が。
おお、天ヶ瀬ダムがあんなに小さく。
右手の奥に見えるのはひょっとして京都市か?
これ、頂上まで上った暁にはいったいこの風景はどうなるのだろう、と萎えかけた心に再び火がともる。
さらに進むこと15分。
だんだん道が怪しくなる。
土砂崩れでただの斜面になっている箇所や、片側が崩落している箇所がいくつかあり。
これはさすがに判断を迫られているか、と思いつつも、とりあえず行ける所まで、と重い足を前に踏み出す。
突然小橋。
あれ、この小橋、途中で右方向にカーブして下ってるなあ・・・と思いきや・・・。
違う!
下ってるんじゃない!
途中で落ちてるんだ!
一気に高鳴る鼓動。
本来なら赤丸の場所までかかってないとおかしいんだ、と気づいた時、私は即座に下山を決めました。
危なかった。
何も考えずにそのまま橋を下るところだった。
やはり閉鎖、というからにはそれなりの理由があるのです。
素人がむやみに立ち入ってはいけません。
例え入っていく人を見かけたとしてもです。
余談ですが、この天ヶ瀬森林公園、異様に遅い速度で歩く先行者の幽霊が出る、という怪談が存在してまして。
下山途中はそんなことばっかり考えてましたね。
一度怯えを知ってしまったらもう、何もかもがマイナス思考。
森林公園入り口脇にある天ヶ瀬ダムへの通路。
付近から撮った天ヶ瀬ダム。
ああ、結局頂上から見ることは叶わなかったか、とため息をつく私だったわけですが、ここでひとつのアイディアが頭をよぎる。
歩いて行けないなら、車で行ける所まで行ってみてはどうか。
私は再び携帯で付近の地図を検索します。
結果、 天ヶ瀬森林公園の頂上を目指すべく、私がチョイスしたのは北のルート。
本当は南側のルートを行きたかったんですが、ゲートで閉鎖されてました。
道中、人気のない山の中に謎の人工物が。
後から調べてわかったんですが、天ヶ瀬ダムを建設する時、石や砂を運んだゴンドラの跡地らしいです。
知らないと結構ぎょっ、とする。
なんだかダム湖みたいな場所に出ましたが・・・・どうも様子が違う。
ここどこ?
どうも私は喜撰山ダムの北側に来ていたよう。
ああ、やはり絶景は天ヶ瀬森林公園を登頂しないと無理なのか、と肩を落す。
いつの日か、再チャレンジを胸に誓い、この日は帰途につきました。
さて、少しはわかりやすい観光地めぐりでない別な宇治の側面を探ることができましたでしょうか。
余談ですが天ヶ瀬森林公園、2012年からずっと補修工事が続いているようです。
広大すぎてもはや行政の手に余っているのかもしれません。
いつか復興する日は来るのか・・・。
足腰が丈夫なうちにまた行ってみたい、と思うんですけどね、見果てぬ夢にならぬことを祈るばかりです。
<終わり>
2015・5探訪